枯れ葉

2024.03.25

 先月のコラム「ほとり座」を書いた後に観た映画は、2月は「夢みる給食」、「枯れ葉」、「ポトフ」、「ボブ・マリーラストライブ・イン・ジャマイカ」で、3月は「ラブ・ストリームス」、「フェイシズ」、「オープニング・ナイト」、「こわれゆく女」、「ブリング ミンヨー バック!」、「春原さんのうた」、「彼方のうた」、「私がやりました」、「サタデー・フィクション」、そして春分の日の昨日「ツィゴイネルワイゼン」でした。今週と来週の土日には、「モンタレー・ポップ」、「ストップ・メイキング・センス」、「きのう生まれたわけじゃない」、「不安は魂を食いつくす」、「にわのすなば」、「天使の影」を観ます。2月に12本、3月に16本観ることになります。

   

 3月16日に、杉田脇士監督の、第32回マルセイユ国際映画祭グランプリを含む3冠を獲得したという上映時間2時間の「春原さんのうた」と、その後に上映された同じ監督の「彼方のうた」が終わってから、監督の舞台挨拶がありました。予定表に書いてあった「春原さんのうた」の概要には、「心にはもう会うことの叶わないパートナーの姿が残っている」と書いてあるのですが、正直なところ、どの場面からそんなことが分かるのかさっぱり分かりませんでした。そこで監督にそのことを質問したところ明確な回答はなく、「今後は、概要は書かないで、映画を観た人の判断に任せたい」とのことでした。

   

 この点、今回のタイトルの「枯れ葉」は予告編を何度か観ていましたが、「春原さんのうた」と違ってストーリーがスッと心に入ってきて、観終わって「よかった、やはり映画はいいな」と思わされた作品でした。2月のコラム以降に観た映画の中では1時間21分と短めの作品でしたが、男女の出会いからラストシーンまでの展開が秀逸で、すっかり感情移入し、ハラハラしたり良かったなぁと思ったりと、短いながらもとても濃密な時間を過ごしました。後からネットで検索したら「フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが5年ぶりにメガホンをとり、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリー」で、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞とありました。

   

 フィンランドを舞台にした映画だと知り、1986年 にフィンランドのタンペレで開催された国際冬期道路会議に参加し、マイナス20度くらいの寒さで、歩道の雪を箒で掃いていたこと、英語が通じなかったこと、氷が張った大きな湖でスパイクタイヤを履いた車を走らせて性能をアピールしていたこと、原爆が投下された際に逃げ込む地下深くの洞窟に作られた避難所を見学したこと、宿泊したホテル近くの小さな毛糸屋で、眼鏡をかけた小柄なかわいらしい女性から、家族にきれいな糸の毛糸で編んだ帽子やマフラーを買い込んだことなどが思い出されました。

   

 「枯れ葉」は、私がこれまで観た映画の中で、間違いなく5本の指に入ると思います。

   

 昨日の祝日には鈴木清順監督生誕100年を記念してのツィゴイネルワイゼンを観ましたが、観終わってホールに出たところで、Mさんが息子さんと次の上映作品「私がやりました」を、会社で配った招待券を使って観に来たところに会いました。「なかなか面白いよ」と話しかけました。また、Iさんは吉高由里子主演の「風よあらしよ」と仲野太賀主演の「熱のあとに」を観ると話してくれました。

   

 社員の皆さん、招待券を使って是非ほとり座に足を運んでください。