光をみつける~全盲ヴァイオリニストからのメッセージ~

2024.04.25

 昨年11月4日に、ほとり座で「光をみつける」というドキュメンタリー映画を観ました。この映画は全盲のヴァイオリニスト穴澤雄介さん(1975年生まれ)の日常を描いたものです。この日は上映が終わってから、主人公の穴澤雄介さんのヴァイオリン演奏と舞台挨拶があり、今回のコラムの題名の彼の著書も販売されていたので1冊購入し、その本の見開きに、トレードマークのカーボーイハットのイラストと漢字で「穴澤雄介」とサインしてもらいました。

   

 今回このコラムを書くにあたり本の目次を見ましたが、「そうそう、こういう話もあった、面白かったなあ」と思ったのが、第2章 ウサギとカメの競争にイモムシが勝つ7つの方法!!、でした。これは2016年ころからの講演の演題ですが、それまでにも2001年ころから中学・高校を中心に教育現場で「過去は変えられる、マイナスをプラスに」という演題で、生徒や保護者、教員向けに講演をしているうちに、だんだん自分自身が話している内容に疑問が出てきたとのことです。それは、特に学生たちには、もしかしたら「自分の過去を偉そうに話す人」と誤解されていないだろうか、「僕とは境遇の違う人の話だし」と最初から拒絶されていないだろうかということでした。自分のみを語っていたのでは駄目で、講演を聴く全ての方が、それぞれにその人と重ね合わせて想像し応用できる内容にしなければ駄目だ、そのためには物語の力を借りるしかないとの結論に達したとのことです。

   

 そこで講演で考えてもらうのが、「ウサギとカメの競争にイモムシが勝つ7つの方法!!」でした。以前から講演では、自分をウサギとカメの競争でカメにすらなりきれていなかったと表現していたのですが、「じゃあ、私のような立場を例えるなら?」と考えたときに出てきた生き物がイモムシだったとのことです。イモムシが勝つ7つの方法とは、

   

  1. ウサギとカメが進まなかったコースを行く
  2. ウサギやカメと違う手段で進む
  3. ウサギとカメが目指している地点とは異なるゴールを見つける
  4. ウサギとカメよりも早くスタートしておく
  5. ウサギとカメより遠くへ進む
  6. ウサギとカメが老いてから勝負に挑む
  7. ニンジンの中に潜り込んでウサギに連れて行ってもらう

   

です。一つひとつの方法を見ただけで、どんな内容なのか興味がわきますね。それぞれにエピソードや解説がしっかり書かれています。興味のある社員にはこの本をお貸ししますので申し出てください。

   

 彼は2017年の秋に、何のつても演奏会の予定もなくひとりでフランスへ出かけ、フランスに入国と出国の日を除いた6日間の内の5日間、各地の演奏会に参加しストリートライブをしています。2018年にはフルマラソンを完走し、2022年には富山マラソンを完走しました。

   

 2018年2月からは、ユーチューバーとして動画を毎日発信しています。40歳から水泳を習い始め、3年ほどで150mほど泳げるようになりました。東都大学野球の始球式ではノーバウンドで投げました。

   

 映画のナレーションは、技のデパート、平成の牛若丸と呼ばれ、小結まで登りつめた舞の海秀平さんでしたが、並々ならぬ努力と創意工夫があったはずだと思ったから依頼したとのことで、映画の最後は穴澤さんと舞の海さんとの対談場面でした。

   

 私が尊敬する中村天風師は「絶対積極」という言葉をいろんな講演会で話されていて、私も毎朝「絶対積極」と心の中で唱えていますが、穴澤雄介さんの生き方は「絶対積極」そのものだと思います。「絶対積極」には男女の区別も年齢も無関係、77歳の私ですが、これからは「絶対積極」をより強く意識して生きていこうと思います。

枯れ葉

2024.03.25

 先月のコラム「ほとり座」を書いた後に観た映画は、2月は「夢みる給食」、「枯れ葉」、「ポトフ」、「ボブ・マリーラストライブ・イン・ジャマイカ」で、3月は「ラブ・ストリームス」、「フェイシズ」、「オープニング・ナイト」、「こわれゆく女」、「ブリング ミンヨー バック!」、「春原さんのうた」、「彼方のうた」、「私がやりました」、「サタデー・フィクション」、そして春分の日の昨日「ツィゴイネルワイゼン」でした。今週と来週の土日には、「モンタレー・ポップ」、「ストップ・メイキング・センス」、「きのう生まれたわけじゃない」、「不安は魂を食いつくす」、「にわのすなば」、「天使の影」を観ます。2月に12本、3月に16本観ることになります。

   

 3月16日に、杉田脇士監督の、第32回マルセイユ国際映画祭グランプリを含む3冠を獲得したという上映時間2時間の「春原さんのうた」と、その後に上映された同じ監督の「彼方のうた」が終わってから、監督の舞台挨拶がありました。予定表に書いてあった「春原さんのうた」の概要には、「心にはもう会うことの叶わないパートナーの姿が残っている」と書いてあるのですが、正直なところ、どの場面からそんなことが分かるのかさっぱり分かりませんでした。そこで監督にそのことを質問したところ明確な回答はなく、「今後は、概要は書かないで、映画を観た人の判断に任せたい」とのことでした。

   

 この点、今回のタイトルの「枯れ葉」は予告編を何度か観ていましたが、「春原さんのうた」と違ってストーリーがスッと心に入ってきて、観終わって「よかった、やはり映画はいいな」と思わされた作品でした。2月のコラム以降に観た映画の中では1時間21分と短めの作品でしたが、男女の出会いからラストシーンまでの展開が秀逸で、すっかり感情移入し、ハラハラしたり良かったなぁと思ったりと、短いながらもとても濃密な時間を過ごしました。後からネットで検索したら「フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが5年ぶりにメガホンをとり、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリー」で、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞とありました。

   

 フィンランドを舞台にした映画だと知り、1986年 にフィンランドのタンペレで開催された国際冬期道路会議に参加し、マイナス20度くらいの寒さで、歩道の雪を箒で掃いていたこと、英語が通じなかったこと、氷が張った大きな湖でスパイクタイヤを履いた車を走らせて性能をアピールしていたこと、原爆が投下された際に逃げ込む地下深くの洞窟に作られた避難所を見学したこと、宿泊したホテル近くの小さな毛糸屋で、眼鏡をかけた小柄なかわいらしい女性から、家族にきれいな糸の毛糸で編んだ帽子やマフラーを買い込んだことなどが思い出されました。

   

 「枯れ葉」は、私がこれまで観た映画の中で、間違いなく5本の指に入ると思います。

   

 昨日の祝日には鈴木清順監督生誕100年を記念してのツィゴイネルワイゼンを観ましたが、観終わってホールに出たところで、Mさんが息子さんと次の上映作品「私がやりました」を、会社で配った招待券を使って観に来たところに会いました。「なかなか面白いよ」と話しかけました。また、Iさんは吉高由里子主演の「風よあらしよ」と仲野太賀主演の「熱のあとに」を観ると話してくれました。

   

 社員の皆さん、招待券を使って是非ほとり座に足を運んでください。

ほとり座

2024.02.26

 ほとり座は、1階に食料品店「地場もん屋」が入る総曲輪ウィズビルの4階にある客席数176席の小さな映画館です。今年は1月に17本観ましたが、今月は18日までに8本観て、この後4本観る予定です。昨年は年間83本でしたので、このペースでいけば年間100本は行きそうです。

   

 今年は1月4日の「ショータイム」からスタートしましたが、年初は大映の戦後20年代の映画が4Kリマスター版で多くかけられていて、観たい作品がたくさんありました。しかし、土日にしか観れませんので、観たのは「山椒大夫」、「羅生門」、「座頭市物語」、「近松物語」、「炎上」、「大菩薩峠」、「大菩薩峠(竜)」、「刺青(いれずみ)」、「浮草」、「雨月物語」、「赤線地帯」でした。「刺青」の若尾文子や「雨月物語」の京マチ子がとてもきれいでしたし、洋画では「ローマの休日」のオードリー・ヘップバーンがきれいでした。もちろん女優がきれいというだけでなく、ストーリーもよく出来ていました。

   

 最近の映画では、フランス映画の「パリタクシー」と、NHKテレビの朝の連ドラ「ブギウギ」で主役の鈴子を演じる趣里さんが出演した「ほかげ」が印象に残る映画でした。いずれの映画も、ラストシーンが今も心に残っています。また、今月11日(日)に観た1966年制作のチェコスロバキアのコメディ「ひなぎく」や、17日(土)に観た、宿題がない、テストがない、「先生」がいない、「きのくに子どもの村学園」の様子を描いた「夢みる小学校」と、翌18日(日)に観たスペイン映画「ミツバチと私」もとても良かったです。「ミツバチと私」はパンフレットには「本当の自分を探す子どもの葛藤と、寄り添う家族の物語」、「生まれ変わったら、女の子になれるかな?」とあり、この作品は、第73回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、主役の男の子ソティア・オテロは、史上最年少の8歳で最優秀主演俳優賞を受賞しているとのことです。

   

 さて観客数ですが、「夢みる小学校」は上映後にオオタヴィン監督のZoomでの出演と質疑応答もあって、8割くらいは座席が埋まっていましたが、他の作品は土日でありながら10数名といったところでした。ウイークデーだったらどれくらいなのでしょうか。

   

 昨年の12月のコラムでは、「12月9日の土曜日、ほとり座で10時からの『親のお金は誰のもの』のチケットを買ったとき、『林さん、今日は独占ですよ』と言われました。本当に観客は私一人でした。こんなに面白い映画は宣伝すべきだと、帰宅してすぐにfacebookに6億円の真珠をめぐるこの映画のあらすじを書き、ぜひ観るようにとPRしました。「良い作品を上映するほとり座が、採算不振で廃業するようになっては、富山市の文化度が下がるというものです。この視点からも、映画館に出かけましょう。」と書きましたが、2月初めに、ほとり座を運営する会社の副社長と社員が来社し、現在も採算は改善せず赤字が累積しているので、昨年1年間にほとり座に最も数多く足を運び、かつ会社の経営者である私に資金援助の依頼をされました。ひと月に50万円の支援金が目標ということでしたので、私は個人として真ん中の口数で支援をすることにし、1年間分まとめて振り込みましたところ、昨日12日に、副社長が無料の映画観賞券を300枚持ってこられました。そこで私が100枚、そして社員全員に1枚ずつと、2月28日に奨学金を寄附する富山県立大学の工学部環境・社会基盤工学科に100枚渡すことにいたします。

   

 多くの方に、富山市の文化と言えるほとり座に出かけてほしいと思います。