新聞記事の切り抜き

2021.08.25

 自宅に来ていた初孫のY(4歳7か月)が、私が新聞を読みながらカッターで記事を切り抜いているのを見て、「じいちゃん、どうして切り抜いてるの?」と聞いてきました。とっさには答えられず、社員に対して常々「仕事をするときには、その仕事の目的は何かを考えることが大事」と言っていた手前、私は「さて、なんで切り抜いているのかな?」と考えてしまいました。


 よく切り抜く記事は、富山新聞の1面のコラム「時鐘」、記者が交代で書いている「紙風船」や矢口誠(翻訳家)さんが紹介する「きょうの言葉」、そして「時鐘」の筆者の一人の小倉さんが毎週金曜日に書いている「小倉さんの時鐘30年こぼれ話」や外交ジャーナリストの手嶋龍一さん、作家・元外務省主任分析官の佐藤優さん、参院議員・作家の青山繁晴さん、政治評論家の筆坂秀世さん、私と高校同期生の昭和女子大学総長の坂東眞理子さん、国際政治学者の三浦瑠麗さんなど多彩な筆者による「北風抄」、そして日経新聞では1面のコラム「春秋」と政治、経済、国際、文化などの最新情報です。北日本新聞では毎月第4金曜日に掲載される私の長男のブログ「うれしい出会い、あれこれ」と、以前は「時鐘」や「春秋」に比べてレベルが低く読む気がしなかったのに去年から見違えるようによくなったコラム「天地人」です。


 切り抜く記事は「いい話題だな!」と思ったコラムや「きょうの言葉」、こんな文章を書きたいものだと思う、私と同い年の小倉さんの「小倉さんの時鐘30年こぼれ話」、多方面にわたる知識や見方を知ることが出来る「北風抄」、そして政治や経済、文化などの最新情報です。それらの記事は読み返すこともあるだろうと、コラムや「きょうの言葉」などの小さい記事はクリップで止めて、私の席の後ろのスチール戸棚につけているマグネットフックに引っ掛け、大きめの記事はスキャンしてパソコンにフォルダー分けして入れています。となれば、切り抜く目的は読み返して知識や感動を再現できるようにしておくということになりそうです。でも現実は読み返すことはほぼありません。そこでゆきの質問をきっかけに、少しでも記憶に定着させるよう読み返してからクリップに止めスキャンするようになりました。


 では、なぜ記事を通して知識を得ようとするのでしょうか。アイバックの小沢社長からずいぶん以前に、英語のphilosophy(フィロソフィー:哲学)は「知ること(sophy)を愛する(philo)」すなわち「よりよく生きるためには、よりよく知らなければいけない」から生まれている、また英語の知る(know)と名前(name)は方向を示す日時計の指示針gnomon(ノモン)から生まれた兄弟の言葉だと教わりました。時刻を知るには「正午」「noon」とか「4時」「four o’clock」という名前が必要だからです。名前を知らなければ、新聞も本も読めません。試験問題も意味が分からなければ合格は最初から無理です。


 「最近の若い者は」と言いたくはありませんが、若者に「本や新聞を読んでいますか」と尋ねても、ほぼ「読んでいません」の返事ですし言葉も知りません。こう言う私も、知らない言葉にいまだに出会います。先日は朝日新聞の「天声人語」で、「アフガニスタンでのタリバンによる死者が17万人を数え、うち市民の犠牲が4万人を超え無辜(むこ)の犠牲者がさらなるテロを招く」とあり、無辜という言葉を知りました。私は自宅の食卓と会社の机の引き出しに電子辞書を置いていますので、即調べたところ(「辜」は罪の意)罪のないこと、また、その人。「―の民」とありました。


 これからも、せっせと新聞記事を切り抜き、よりよく生きるための糧としていきましょう。