「夢をもって」

2013.03.22

3月8日に黒部市立生地小学校の6年生に課外授業を行ったが、その演題が「夢をもって」であった。今回の課外授業も冨山経済同友会を通じての依頼であったが、私のこれまでの課外授業はほとんど中学校での授業であり、小学校では初めて、さらに最初から演題が決まっているのも初めてであった。
 中学校での私の課外授業の演題はずっと「学ぶこと、働くこと」だが、これは、富山県の全ての公立中学校の2年生が、毎年1週間行っている「社会に学ぶ14歳の挑戦」の活動を始めるに当たり、彼らに働くことの意義について話して欲しいというリクエストに応えて私が考えた演題であった。そして、ほとんど毎年行っていることで、それほど準備に時間を要しはしていなかった。
 しかし今回は、卒業間近の6年生が夢をもって中学校に進学して欲しいという学校の要望に応えて、3年前から同じ演題で経済同友会の会員が行ってきた課外授業なので、4回目の私が変えるわけにはいかないだろうと考え、この演題でお引き受けしたものの、なかなか授業の方向性が定まらなかった。
 3月8日が迫ってくる中で、2月の初めに参加した「職業能力開発推進者講習会」での事例発表で「実行あるのみ」として引用された吉田松陰の次の言葉を知って、この言葉を課外授業の中心に据えることに決めた。「夢という言葉が使われている、これだ!」、そして説得力のある言葉だと思ったのだ。
  その言葉とは、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」である。
吉田松陰のこの言葉を中心に授業内容を構成することにして、中学生への課外授業で使った「空っぽのコンピュータに情報が入っていなかったら? 知識がつまっていない空っぽの頭から創造力は生まれない、だから、読み・書き・そろばんや暗記は大切」というスライドの前後に、パソコンを操作しているネコや犬のスライド写真を入れるなど面白い動物の写真をあちこちにはめ込んだりして、児童の興味を引くようにと考えながら、楽しくスライドを作っていった。
 このようにしてスライドを作成しながら思い出したことがあった。それは、会社に出かける前の妻との茶飲み話で今回の課外授業の話をしたら、妻から「夢をもってと言われてもね。和夫さんは考えたことがある?」と問い返され、うなってしまったことだ。児童から、「林先生の夢は何ですか?」と質問されたら、何と答えたらよいのだろうか?
 それならば、事前に私の夢をスライドにしておこうと思った。そこで自分の夢は?と真剣に考えた。行き着くところは、経営者としての想いであった。経営理念を「夢」として、理想、計画、実行と考えていった。そして、次のような成功へのプロセスが出来上がった。
夢 = 建設工事を通して世の中の役に立つこと
(ふるさと富山を発展させる)
理想 = 「三方良しの公共事業改革」が富山県で進められていること
三方良し=発注者良し、施工者良し、地域住民良し
計画 = 発注者と施工者に「三方良しの公共事業改革」をしっかり理解させるために、勉強会やワークショップを行う
実行? = 2013年1月31日 富山県庁の土木技術職員を対象に講演会を実施した
実行? = 2013年6月に、富山県発注工事でワークショップを実施する
実行? = 2013年中に、国土交通省、富山県、富山市発注工事でワークショップを何回も実施する
3月8日の授業では、児童が真剣に聴いてくれたことと、質問にはきはきと答えてくれたことが印象的だったが、翌週の火曜日12日に、担任の先生からのお礼状、私の課外授業を題材にして先生が前日の11日に発行された学年通信(NO 123)、そして6年生児童全員の感想文(心に残ったことや勉強になったことを理由も添えて3つくらいと、お礼の手紙)が届けられた。それを読んで、感激した。
 先生は、「私は本当に感動しました。話だけではなく、この吉田松陰の言葉を自分に置き換えて話をしている姿に…私も話をするだけでなく、実践あるのみと考えさせられました。」と書いておられた。児童からも、「〜「夢」について堂々と語る林先生にあこがれを感じました。それは自分も夢に向かってがんばっているからだと思いました。その豊富な経験を私たちに伝え、与えてくれたことに感謝の気持ちが絶えません。〜」を初め、どの子の感想文も、しっかり私の話を聴き、自分の意見、感想を書いていてくれていた。
 私にも多くの学びと収穫のあった今回の課外授業だった。それは、人の話の引用だけではなく、自分の体験を語ることの大切さを学び、さらに、私自身が自分の「夢」を確認し、それを実現しようと本気にさせてくれたことだ。
生地小学校の6年生と担任のY先生、本当にありがとうございました。