92-81

2023.12.25

 今年1月のこのコラムのタイトルは「 81+5」でした。これは1階に食料品店「地場もん屋」が入る総曲輪ウィズビルの4階にある客席数176席の小さな映画館ほとり座で、去年1年間に観た映画の本数が81本と県内のほかの映画館で観た映画が5本だったということです。

   

 今回のタイトル「92-81」の「92」は、今年ほとり座で1月から観てきた映画と今月末までに観る予定映画の合計本数です。ほとり座から毎月送られてくるスケジュール表に書かれている作品の概要を読み、観たいと思う映画に〇をつけておいて観るのですが、今年は81本だった去年より11本多く観ることになります。

   

 今年最初に観たのは1月3日の主演フランキー堺の「幕末太陽傳」で2本目は同じ日の夕刻に観たジョージアを舞台にした「金の糸」。7日の土曜日にはアメリカ合衆国の「ホワイト・ノイズ」で9日の日曜日には「丹下左膳余禄」、そして28日の土曜日には耳の聞こえない女性ボクサーを描いた「ケイコ目を澄ませて」で、1月はこの5本でした 。手帳の毎月の予定欄に書き込んでいる映画名を挙げたのですが、書きながら題名から内容がすっと思いだされた映画は一つもありません。記憶力の衰えかと愕然としてChromeで映画名を入れて検索し、内容を思い出していました。

   

 2月は10本、3月は14本、4月が8本で5月が5本、6月が4本で、ここまでの半年で46本でした。題名から何となく内容が思い出せたのは、「チョコレートな人々」、「㊙色情めす市場」(ポルノ映画ではありません)、「天上の花」、「寝小屋-海から生まれた家族」、「ただいま、つなかん」、「ドリームホース」、「殺しの烙印」、「神々の深き欲望」、「コンパ―メントNo6」、「トリとロキタ」、「午前4時にパリの夜は明ける」、「セールスガールの考古学」、「岡本太郎の沖縄」、「茶飲友達」でした。

   

 7月が14本、8月が5本、9月が7本、10月が2本、11月が10本、そして今月が8本です。内容が思い出せたのは「メグレと若い女の死」、「丘の上の本屋さん」、「ジョージア・白い橋のカフェ」、「恋はロープウエーに乗って」、「海を待ちながら」、「EOイーオー」、「ハマのドン」、「ゆ」、「サマーウォーズ」、「あいのこむらがえり」、「テノール」、「せかいのおきく」、「Rodeoロデオ」、「青いカフタンの仕立て屋」、「RRR」、「裸足になって」、「バカ塗りの女」、「ロック、ストック&トゥ-・スモーキング・バレルズ」、「光をみつける」、「レオン」、「エドワード・ヤンの恋愛時代」、「私の嫌いな弟へ」、「リバー、流れないでよ」、「夢みる校長先生」、「シェアの法則」、「ロイ・ハーグローブ」、「親のお金は誰のもの」、「ダンサー」でした。

   

 読者の皆さんには、ここまで題名をずらずらと書かれても、「面白い題名だな」と思うくらいで、実際に観ていない人にはつまらないコラムだと思われることでしょう。それを百も承知で書いたのは、ぜひ映画館に足を運び、YouTubeではなくて大画面で観て、楽しい、あるいは考えさせられる時間を持ってほしいのです。読書は、自分から積極的に本に働きかけなければいけないので映画鑑賞より能動的だと言えますが、映画も読書ほどではなくても脳の活性化には役立つと思います。

   

 12月9日の土曜日、ほとり座で10時からの「親のお金は誰のもの」のチケットを買ったとき、「林さん、今日は独占ですよ」と言われました。本当に観客は私一人でした。こんなに面白い映画は宣伝すべきだと、帰宅してすぐにfacebookに6億円の真珠をめぐるこの映画のあらすじを書き、ぜひ観るようにとPRしました。良い作品を上映するほとり座が、採算不振で廃業するようになっては、富山市の文化度が下がるというものです。この視点からも、映画館に出かけましょう。

   

   

 映画は、時代を超え、国や地域を超え、常識を超え、性差も超えます。何か暗いと感じながら観ている映画でも、ラストがハッピーだとホッとします。映画が終わり、会場が明るくなって現実に戻るときの充実感を味わってみませんか。