「禁じられた遊び」とウクライナ

2022.03.25

 3月6日の日曜日、総曲輪のほとり座で「禁じられた遊び」を観ました。

 映画は第二次世界大戦下の1940年6月、ドイツ軍から逃げるためパリから車や馬車で逃げてくる多くのフランス人の行列、それを機銃掃射するナチスドイツの戦闘機の場面から始まります。映画のチラシに書かれているあらすじは「第二次世界大戦中のフランス。ドイツ軍によるパリ侵攻からの避難途中、5歳の少女ポーレットは爆撃により両親と愛犬を亡くしてしまう。ひとりはぐれて、子犬の亡きがらを抱きながら彷徨ううち、11歳の農民少年ミシェルと出会う。ミシェルから死んだら土に埋めるのだ、と知らされたポーレットは子犬を埋め、お墓を作り十字架を供える。それからは、お墓を作り十字架を供える遊びがすっかり気に入り、この秘密の遊びのために二人は、十字架を集め始め、ついに教会や霊柩車からも十字架を持ち出すようになってしまうのだった・・・・。」

      

 映画の冒頭の空爆するナチスドイツの戦闘機と逃げ惑う人々のシーンは、2月24日にロシアのプーチン大統領がウクライナで全面戦争に踏み込み、その後日増しに戦闘が激しくなったウクライナの悲惨な状況を報道するニュース映像と否応なく重なりました。ロケット弾が撃ち込まれて炎をあげながら崩れ落ちる集合住宅、黒煙を上げて燃える戦車や乗用車、幼い子供を抱きかかえた母親が子供二人を失ったと嘆き悲しむ姿、ポーランドへ逃れるスーツケースを抱えた人々。

        

 ウクライナ検察当局は19日、死亡した子どもは少なくとも112人、怪我した子どもは140人以上と伝え、「ロシア軍に包囲されているウクライナ南東部マリウポリ市の当局は20日、住民400人が避難していた芸術学校に、ロシア軍が19日に爆弾を投下したと発表した。避難していたのは主に女性や子ども、老人だという。市当局は、建物が破壊され、多くの住民ががれきの下敷きになっているとしている。」というニュースに、「禁じられた遊び」の1940年から82年後にこのような戦争が現実として起きている事実に、平和な日本に暮らす私には身の危険は感じていなくても心を寄せなければいけないと思い、毎年年末に寄付をしている「国境なき医師団」と「国連UNHCR協会」に「ウクライナ支援」として追加の寄付を行いました。

 さて、「禁じられた遊び」で、ミシェルは嘘をつきます。馬に蹴られて寝込んでいたミシェルの兄が亡くなり、ミシェルは父が用意した霊柩車から飾りの十字架を盗むのです。十字架が消えていることに父が気づいてミシェルを問い詰めると、ミシェルは隣人がやったのだと嘘をついて言い逃れをしました。 映画から現実に戻すと、プーチン政権はたくさんの嘘をついています。3月2日の日経新聞に“プーチン政権が重ねた「嘘」”という記事が載っていました。

        

① プーチン政権:ロシア系住民が多い東部でウクライナ軍がジェノサイド(集団殺害)

 ➡ 欧米・ウクライナ:国際機関の指摘なし。1.4万人死亡の東部紛争はロシアの軍事介入が原因。軍事侵攻を正当化するために作られた恐れがある。

        

② ウクライナ軍が東部住民の攻撃を計画

  ウクライナ軍は防衛目的で戦闘を展開。東部の親ロ派が「攻撃迫る」と避難を呼びかけた動画は発表2日前に作成。

        

③ ロシア系住民を保護するための軍事作戦

  ウクライナがロシア語を話す住民を迫害した事実や国際機関の指摘なし。侵攻でロシア軍にも多数の死者。

        

④ ウクライナが核配備を計画

  1994年、ウクライナはロシアと米英との「ブタペスト覚書」で安全の保証と引き換えに核を廃棄。この覚書は14年のクリミア併合やウクライナ東部侵攻でほごにした。

        

⑤ ロシアは軍事施設しか攻撃していない

  住宅や幼稚園に砲撃。子どもを含む民間人の死傷者多数。病院への空爆も「病院は兵士が使っていた」などとして、医療機関への攻撃を禁じた国際法違反にはあたらないとの立場を貫く。

        

⑥ 侵攻する意図はない

 ➡ 事前に入念に計画か。「軍事作戦」発表前に複数の都市を攻撃。

        

⑦ 欧米が紛争に向かわせている

  欧米は外交解決を訴え。侵攻を受けドイツなどは武器供与に方針転換

        

⑧ NATOが東に拡大しないとの口約束を破り、ロシアの脅威に

  NATOは防衛目的の同盟。ウクライナなどを念頭にした不拡大の約束があったかどうかに疑問。

        

この記事を読む限り、プーチン政権の嘘は、ミシェルのようにとっさについた嘘ではなく、ロシアの戦争を正当化するためにすぐばれるような噓を悪知恵を働かせて作った嘘だと思いました。

        

 映画の最後は、多くの人であふれる駅に連れてこられたポーレットは、人ごみの中から「ミシェル!」と呼ぶ声が聞こえて、その声にハッとしたポーレットは涙して「ミシェル!」「ミシェル!」と叫びながら探しに行きます。しかし人違いで、彼はいませんでした。ポーレットはママとミシェルの名を泣き叫びながら走り出し、雑踏の中へと姿を消していくのです。

 このシーンに涙し、ウクライナの惨状に涙している私です。