経済同友会の課外授業

2010.06.04

富山経済同友会の会員が富山県内の小中学校や高校に出向いて行なう課外授業は平成13年度から始まった。その第1回目は平成14年1月に舟橋中学校の1年から3年までの各学年で行われ(関連記事:14年2月コラム/課外授業体験記-その1-、14年3月コラム/課外授業体験記-その2-)当時教育問題委員会の副委員長であった私は1年生の授業を受け持った。演題は「“学ぶ”について考える」だった。 その後、課外授業の依頼が増え、10年度目に入った今年6月18日現在、延べ117の学校で延べ143人の会員が課外授業を行なってきた。
 この間に私は、平成17年度に1回(富山市西部中学校)、平成20年度に2回(富山市立呉羽中学校)、平成21年度に3回(射水市射北中学校、富山市新庄中学校、富山大学付属中学校)、そして今年度既に2回(氷見市西部中学校、富山市楡原中学校)合計9回の課外授業を行なってきたが、私が行った課外授業はすべて中学校であった。そして対象学年は、富山県下の全ての公立中学校で行なわれている「社会に学ぶ『14歳の挑戦』」にあわせての2年生への授業が3校、全校生徒対象が4校、そして1年生対象が、舟橋中学校と平成21年12月の富山大学附属中学校の2校であった。
 課外授業での演題は、附属中学校では「課題設定のための達人講座」のひとつとしての「福祉分野」と決められていたが、これ以外は、平成17年5月に富山市立西部中学校で行った2回目の授業から先日6月18日の富山市立楡原中学校まで「学ぶこと、働くこと」がずっと変わらぬ演題である。これは、富山市立西部中学校での講演が、職場体験を通じて将来の自分の生き方を考えることを目的とした「14歳の挑戦」を前にしての2年生への授業だったので、舟橋中学校での最初の演題「“学ぶ”について考える」の「学ぶ」と、職場体験で「働く」ことをくっつけて、「学ぶこと、働くこと」に決めたのである。
 パワーポイントを使っての私の授業は、「人が他の動物と違うのは、頭と社会性を持っていることであり、賢くなって個人、家庭、会社、地域、日本、世界の様々な問題を解決する」から始まり、「社会性」から「コミュニケーションはキャッチボール」と説明する。次に「より良く生きるために、より良く知る」という英語の哲学Philosophyの語源について解説して、なぜ「学ぶ」のかを考える。さらに「能力は才能、経験、意欲、考え方の掛け算」であり、その中で考え方が一番大切であることをイチロー選手や松下幸之助翁の例を挙げて説明する。次に、福沢諭吉の「教育論」を紹介し、礼儀、規律、挨拶の大切さについて事例を挙げて説明してから、「躾」も「働く」も漢字ではなく日本人が作った和字、国字で、「働く」は「端・楽」であり、「自分のために働くのではなく、世のため人のために働く」のだと話す。
 その後は、土木工事(工学)が英語でCivilengineeringと言うことや、英語の社会資本Infrastructureの意味を話してから朝日建設の経営理念に言及し、さらに母の介護経験の話から朝日ケア設立に至った経緯や運営理念を話す。
 授業時間は50分間が多いのだが、それ以上もらえる時には、「パン屋の話」(HALシステム設計の安中社長紹介の「限界なき思考方法」の話)、杭につながれた象の話、ノミのサーカスの話などを付け加え、終わりは「さようなら」と言ってからGoodbyeの解説、最後におまけとして外国でクシャミをすると周りの人から言われる「God bless you」を説明して終了となる。
 課外授業をした後に生徒からの感想文が届く。「人間は一人では生きられない」、「能力は掛け算」、「コミュニケーションはキャッチボール」などが印象に残ったとか、「働くのは家族や自分の生活のためだと思っていたが、人のために働くと知って、驚いた」などの感想に、私が盛り沢山に話したことを、それぞれに何かしら心に留めていてくれたとうれしく感じる。
 この原稿を書きながら読み返していた感想文の中に、私が母を病院に見舞った時に看護師さんが言った「人間が生きているのには必ず意味があります」を聞いて、「まだ中学2年生なので、誰のために、何のために、どうして生きているのかなどを考えてみても、正直私にはその答が分かりません。でも、将来のために今の自分があるなら、今の自分をもっと大切にしたいし、もっと頭が良くなってステキな将来をGETしてやるぜーという気になります。大人の話はなぜかちびっ子の心を動かすんです。林さんのおかげで、またエンジンに火が着いたような気がします。ありがとうございました。」というのを見つけた。思わず笑みがこぼれ、これからも課外授業を通して、生徒の役に立つ「働き」をしたいと思った。