5月16日に富山県立大学で行われた朝日建設奨学金受給者決定通知書交付式に、DX推進室長と一緒に出席しました。昨年当社から富山県立大学に500万円の奨学金を寄付しましたが、これは環境・社会基盤工学科3年の男女2人の学生に毎月3万円の奨学金を2年間支給するものです。3万円×2人×12か月×2年間=144万円、3年間で432万円ですので、3年間に6人の学生が受給できることになります。500万円-432万円の残り68万円は図書の購入に充ててもらいます。
昨年、県立大学に寄付の申し出をした時に、寄付金の使い道を大学の教務課の男性職員は、車体に「朝日建設奨学金カー」と入れたマイクロバスの購入か図書の購入に充てたいとのことでしたが、私は学生に対する奨学金の支給を提案しました。これは朝日建設に入社してほしいという思いからではなく、富山県にこういうことをする企業があることを知ってもらい、県外出身者でも先ずは富山県で就職してみようと思ってもらいたいという考えからだと話したところ、女性職員は涙ぐんでいました。
交付式では式次第の最初に社長挨拶があり、私は日経新聞の5月3日のコラム「春秋」の切り抜きを読み上げました。4月からNHKテレビの朝の連続ドラマで「あんぱん」を放送している時であり、タイムリーだと思ったからです。
コラムの文章には、やなせたかしさんの言葉が記されています。アンパンマンの最初の絵本のあとがきには「捨身、献身の心なくしては正義は行えません」、「アンパンマンの遺書」には「普通の人は無名である。顔は知られていない」との思いを込めた、とあり、正義を巡る洞察の背景にあったのは自らの戦争体験とあります。コラムの筆者は「そしてこの地上では、普通の人たちが犠牲になる戦禍がなお続いている」と書いています。そして、アメリカとウクライナが鉱物資源の共同開発を柱とする協定に署名したとして、軍事力にものをいわせる大国の綱引きと経済的な権益で事態が変わる。まさにディール。戦争の行方も左右する。これが現代外交のリアリズムなのだろう。そんな世界でも、変わらぬ理想が根底に流れていてほしい。世を動かす利他の行為。「正義のための戦いなんてどこにもない」。やなせさんの言葉をかみしめる。
利他に対する反対語は利己です。利他とは、他人の利益を優先する考え方で、利己とは、自己の利益を優先する考え方です。当社の経営理念「建設事業とその関連事業を通して、世の中の役に立つ。そしてふるさと富山を発展させる」の「世の中の役に立つ」も利他の心です。利益を上げるという利己の心ではありません。ロータリークラブ会員の行動指針である四つのテストの4番目「みんなのためになるかどうか?」も利他の心だと言えます。
部長は、「昨年は応募者は多くはなかったが、社長が大学で講義をされた時に、講師紹介で朝日建設奨学金があることを話したことで、今年の応募者は多くなりました。」とのことでした。
終わって駐車場に向かう時に、受給者の女子大生が私の足元がおぼつかないのを見てか、車のところまで付き添ってくれましたが、奨学金の受給には論文も書かなければいけないと話してくれました。富山県出身の彼女は交付式で、卒業後はふるさと富山の発展のために働きたいと話していましたが、利他の心を持った素敵な受給者が選ばれたとうれしく思いました。
昨日4月20日(日)は、富山市長選挙と富山市議会議員選挙の投票日でした。私は呉羽会館で投票を済ませてから、総曲輪のほとり座に向かいました。観た映画は、2022年に製作されたチリ・フランス合作のドキュメンタリー映画「私の想う国」です。
チリ出身のドキュメンタリー映画監督パトリシオ・グスマンが作ったこの映画は「2019年10月、南米のチリの首都サンティアゴで、地下鉄料金が30ペソ値上がりすることへの反対に端を発する民主化運動が突然動きだした。リーダーもイデオロギーもなく爆発的なうねりとなり、人口約1900万人のうち、若者や女性を中心とする約150万人もの人々が、より尊厳のある生活を求めてデモに参加した。この社会運動はチリの保守的・家父長的な社会構造を大きく揺るがし、やがて2021年に36歳という世界で最も若いガブリエル・ボリッチ大統領誕生に結実する」、「目出し帽に鮮やかな花をつけてデモに参加する母親や、家父長制に異を唱える4人の女性詩人、先住民族マプチェの女性として初めて重要な政治的地位についたエリサ・ロンコンら多くの女性たちへのインタビューを交えながら、劇的に変わりゆく母国チリの姿をダイナミックかつ詩的な映像美で描きだす」、「政党主導のもとに行われてきた旧来の政治運動とここで描かれる運動が決定的に異なるのが、女性や若者たちが中心であること以外に、特定のイデオロギーやカリスマ的なリーダーによって引っ張られたものではなく、自然発生的に自らの生活・人権・尊厳を守りたいという人々が集い、社会構造を揺るがすうねりとなっていったことだろう」というものです。
映画では、デモに参加した人たちが、こぶし大に割った石を警察の車両に投げるシーン、軍用車が水を撒いて市民の後退を促すシーン、火を放たれた警察車両が後戻りするシーン、催涙弾が左目に当たり視力をほとんど失った若い女性が語る言葉、道を埋め尽くした人々がジャンプしたり、フライパンやブリキ缶をリズミカルに壁に打ち付けたりしながらシュプレヒコールする様子、ガブリエル・ボリッチ大統領の就任演説で語った言葉「歴史的転換期を迎えた今を逃してはいけない。立ち上がれ。太陽はチリのために輝いている」など、印象的なシーンにあふれた映画でした。
私はこの映画を観た後本社で、溜めていた日経新聞を読み、再びほとり座で「早乙女カナコ子の場合は」を観てから、午後8時から行われるホテルグランテラス富山での「藤井ひろひさ選挙報告会」に雨の中、出かけました。7時40分ほどに会場に入りましたが、すでにほぼ9割の椅子が埋まっていました。そしてテレビモニターに映し出された8時のニュースで藤井市長の再選がトップニュースで伝えられると、拍手が沸き起こり、その後は来賓の祝辞やウグイス嬢からの花束贈呈、藤井市長の挨拶と続き45分間ほどで終了しました。
さて、翌日は新聞が休刊日だったので、本日の新聞で「富山市長に藤井氏再選」の記事を読みました。見出しの横には「投票率最低42.96%」とあり、本文には「2021年の前回選47.97%、17年47.84%を下回り市町村合併後で最低だった」とありました。19万人超が棄権したとも書かれていました。
私は住民票を18歳の時に大学のある仙台に移し、選挙権を得た20歳の時からすべての選挙に出かけています。今回の選挙では、当社の18歳と19歳の社員に、投票に行くようにとスマホでメールしました。そんな私ですので「投票率最低42.96%」には愕然としました。そして映画「私の想う国」を思いました。独裁政権下でのチリと、ニューヨーク・タイムズ紙の「2025年に行くべき52カ所」に大阪とともに選ばれた富山市とは、経済・政治状況や治安状況が全く違いますが投票率42.96%はないでしょう。7月の参議院選挙では70%ほどの投票率でありたいものです。
3月18日(火)、富山第一銀行のファースト・バンク青雲会研修会で高山市に出かけました。昼食の飛騨牛ステーキに惹かれての参加でしたが、ウイスキーのロックを飲みながら食べたステーキは柔らかく、トロリと美味しかったです。これで参加の目的は達成できましたが、もう一つ収穫がありました。それは、高山駅から貸し切りバスで出かけた飛騨産業株式会社の見学でした。
飛騨産業は1920年(大正9年)創業の木工家具を作る会社ですが、会社案内のパンフレットには、家具インテリア用品の製造販売、自然エネルギーによる発電事業、林業/製材業とあります。
会社に着くと、最初に、創業100周年の節目の2020年に代表取締役社長に就任した岡田明子社長(42)から、社長就任の2021年に制定した企業ビジョン「志」と、4つの価値観、「森と歩む」、「人を想う」、「技を磨く」、「時を継ぐ」について説明を受けました。また、従来から勤めている社員の反対もあったものの、企業ロゴを「キツツキマーク」から「HIDA」に変更した話を伺いました。その後、説明会場の一階上にある「飛騨職人学舎」を見学しました。この「飛騨職人学舎」についてホームページには、「伝統の心と技術を大切に受け継ぎ、世界中の人々に感動と喜びを与えることを生きがいとする、技能と人間力を兼ね備えた一流の木工家具職人の養成、及び次世代への文化継承に寄与することを目的に2014年より飛騨職人学舎を開校いたしました」とありました。
この日は、19歳の男性と23歳の女性が家具を作っていて、一人2分間ずつ名前、出身地、学舎に入った動機を語った後、2024年に制定した「飛騨職人学舎職人心得30か条」を交互に読み上げました。なかなか良かったので写真に撮りましたので、以下に記載します。
1.挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます。
2.連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます。
3.明るい人から現場に行かせてもらえます。
4.周りをイライラさせない人から現場に行かせてもらえます。
5.人の言うことを正確に聞ける人から現場に行かせてもらえます。
6.愛想よくできる人から現場に行かせてもらえます。
7.責任を持てる人から現場に行かせてもらえます。
8.返事をきっちりできる人から現場に行かせてもらえます。
9.思いやりがある人から現場に行かせてもらえます。
10.おせっかいな人から現場に行かせてもらえます。
11.しつこい人から現場に行かせてもらえます。
12.時間を気にできる人から現場に行かせてもらえます。
13.道具の整備がいつもされている人から現場に行かせてもらえます。
14.おそうじ、かたづけの上手な人から現場に行かせてもらえます。
15.今の自分の立場が明確な人から現場に行かせてもらえます。
16.前向きに事を考えられる人から現場に行かせてもらえます。
17.感謝のできる人から現場に行かせてもらえます。
18.身だしなみのできている人から現場に行かせてもらえます。
19.お手伝いのできる人から現場に行かせてもらえます。
20.自己紹介ができる人から現場に行かせてもらえます。
21.自慢のできる人から現場に行かせてもらえます。
22.意見が言える人から現場に行かせてもらえます。
23.お手紙をこまめに出せる人から現場に行かせてもらえます。
24.トイレそうじができる人から現場に行かせてもらえます。
25.道具を上手に使える人から現場に行かせてもらえます。
26.電話を上手にかける事ができる人から現場に行かせてもらえます。
27.食べるのが早い人から現場に行かせてもらえます。
28.お金を大事に使える人から現場に行かせてもらえます。
29.そろばんのできる人から現場に行かせてもらえます。
30.レポートがわかりやすい人から現場に行かせてもらえます。
飛騨職人学舎は2年制で、授業料はなく、逆に毎月8万円の給料が支給されます。休みは 盆と正月だけで、携帯電話やスマホは預けさせられるとのことです。家族と連絡を取るには、23番の「お手紙をこまめに出せる人から現場に行かせてもらえます」を実践しなければならないのです。
それぞれの条文には解説がついています。少しだけ載せましょう。
11の、しつこい人から現場に行かせてもらえるのは、「貪欲に学ぶ姿勢でいることで、多くのことが学べるからです」で、21の、自慢のできる人から現場に行かせてもらえるのは、「熱意をもってこだわりを伝えると、相手に感動してもらえます」とあります。解説を読まないと、なぜこうしなければいけないかわからない条文がほかにもあると思います。気になる人は、私に質問メールを送ってください。写真の文字がぼやけていますが、判読してお答えします。