2026.10.27

144本

 ほとり座で2024年に年間126本、2025年に年間124本の映画を観ました。今年は2月2日から2月20日までほとり座が空調工事のため休館だったにもかかわらず、今月25日までに既に144本観ています。

   

 中にはこんな作品もありました。同性愛ものの「ドランクヌードル」、これは知人の女性が途中で出てきた映画でした。また、監禁、拷問、虐待、殺人の場面ばかりの「マーターズ」も、わざわざ水曜日の18時35分から観に行くことはなかったと思いました。入場する時にスタッフの男性が「怖いですよ」と話しかけてきましたが、その通りで、男性客がもう一人いたことが救いでした。帰りのエレベーターの中で彼に「怖い映画でしたね」と話しかけると、「こういうスプラッター映画は結構好きなんです。」と答えるのでした。世の中にはこういう人もいるんだと思い「スプラッター」を調べたら「スプラッターとは殺害シーンにおける生々しい描写に特徴のある、映画の様式のひとつである」とありました。

   

 「ジョン・クランコ」は、ジョン・クランコが警察のおとり捜査により同性愛行為で起訴されるという出だしでしたが、彼はその後シュツットガルト・バレエ団の芸術監督になり、メトロポリタン歌劇場に招かれ世界の頂点に駆け上がるというストーリーでホッとしました。

   

 反対に観て良かった映画は台湾映画の「霧のごとく」で、台湾映画史最高峰とチラシにありましたが、確かにその通りの映画でした。1950年代、戒厳令下の台湾で反政府分子として捕らえられた兄が台北で処刑されたことを知り、わずかな金と兄の形見の時計を手にひとり台北に向かう少女阿月(アグエー)が怪しい男に騙されて遊郭に売り飛ばされそうになったところを、人力車の車夫・趙公道(ザオ・ゴンダオ)に助けられ、手数料を払って兄の遺骨を見つけだすという物語です。阿月と趙公道の演技に引き込まれました。同じく台湾映画の「左利きの少女」、これは10月25日(土)に観ましたが、利き手である左手を祖父から「悪魔の手」だから使わないように言われるものの、母親がシングルマザーで貧しいので、左手でおもちゃを万引きする5歳の少女イージンとハイティーンの姉イーアンを中心に繰り広げられる物語です。最後の場面で、姉と妹ではなく母と娘だったことが明らかになったのには驚きましたが、心温まる映画でした。

   

 中国映画の「長安のライチ」は、中国・唐の天宝年間に実在した「ライチ使」を題材に、楊貴妃の誕生日を祝うため皇帝から「数千キロ離れた産地から新鮮なライチを長安まで運べ」と命じられ、一粒のライチをめぐる前代未聞の任務に挑んだ下級官吏の旅路を、壮大かつユーモラスに描いた作品で、最初から最後までハラハラしながら観ました。共産主義の中国でこんな映画が作られることが驚きでもありました。

   

 フランス映画では3月に観た「ポンヌフの恋人」、9月に観た「急に具合が悪くなる」が印象に残っています。「ポンヌフの恋人」は、パリで最も古く美しい橋ポンヌフで繰り広げられる大道芸人の青年と、橋の上で絵を描く失明の危機にかられた女画学生の純愛を描いた映画と解説にあります。ラストシーンは、画学生の父親が娘を探す張り紙に眼病の治療法が見つかったと書いているのを知った娘ですが、青年と恋に落ちた娘は治療をしないと決断します。純愛とはこういうものかと知った作品でした。

   

 「急に具合が悪くなる」は、濱口竜介監督による、日本・フランス・ドイツ・ベルギー共同制作の映画で、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、主演俳優の岡本多緒とヴィルジニー・エフィラの2人が女優賞を共同受賞した作品です。がん闘病中の演出家森崎真理とパリ郊外の介護施設の施設長のマリ―=ルー、同じ名前の響きを持つ偶然に導かれ、二人の交流が始まります。介護施設では、ユマニチュード(フランス語で人間らしさ)という包括的ケアメソッドを取り入れ入居者を庭の芝生の上を歩かせようとするマリ―=ルーと危険だからと反対する看護婦長とのやり取り、そして入居者が手をつないで裸足で芝生を歩く画面にホロっときました。朝日ケアのスタッフにも観るように勧め招待券を渡しました。

   

 5月に観たスイス映画「ナースコール」は、人手不足の満床病棟で看護師に絶え間なく降りかかる激務と不測のトラブルを描いた社会はヒューマンドラマと解説にありますが、一晩の夜勤の間に起こる出来事を時には笑いも交えて描いた映画で、介護事業に携わる私にとって参考になりました。

   

 日本映画も紹介しましょう。のんと安田章大がW主演の「平行と垂直」、松たか子が主演の「ナギダイアリー」、富山県出身で呉羽高校で演芸部に所属していた荻野友里が主演の「レンタル家族」、宮沢りえと北村巧海が出演する「しびれ」です。「平行と垂直」は、自閉症スペクトラムの兄と結婚を控える妹の温かくも強い絆を描いたヒューマンドラマです。一緒に観た友人は、のんと安田が腕を組んで結婚式場のレッドカーペットを歩く場面に涙していました。「ナギダイアリー」は、自然豊かな町「ナギ」で創作に打ち込む彫刻家の寄子(松)のもとに、弟の元妻で建築家の友梨が休暇をとって東京から訪れる。友梨をモデルに彫刻を制作する数日間を描いた映画です。第79回カンヌ国際映画祭では7分間に及ぶスタンディングオベーションが巻き起こり、海外メディアから「今年のベスト映画の一本」、「心を奪われた」などの高い評価を受けた作品です。「レンタル家族」は、認知症になったおばあさんが、娘が好きだった料理を作って待っていて、レンタルでやってきた離婚した娘と孫娘に会って楽しくおしゃべりをし、帰り際に娘と孫役が「また来るね」と言っていたように思います。「しびれ」は、新潟県の日本海沿いの町で生まれた少年・大地(北村)は、幼少期に暴君のようだった父の影響で言葉を失い、母・亜樹(宮沢)は、水商売で日銭を稼ぎながらも家に戻る時間の少なく、生活は苦しいものでした。20年の年を経て、父親を探し出した大地は、包丁で父親の腹を刺します。宮沢りえが年齢を重ね最後に肝硬変で死んでいく演技は見事でした。

   

 「読書や映画は、日常に安心感や自分だけの世界を与えてくれる『手すり』のような役割を果たしてくれます。」という言葉がありますが、私にとって、ほとり座での映画鑑賞と寝る前の2、30分の読書は、まさに「手すり」だと思います。