2021.05.25

富大でのオンライン講義

 2016年から富山大学経済学部で、富山新聞文化センターの寄付講座「現場の経営学:地域企業の経営者から学ぶ」の講師を務めています。昨年は、新型コロナウイルス感染を避けることから、一昨年の私の講義の録画を観てもらいましたが、今年は4月21日(水)に、今年の寄付講座のトップバッターとして、経済学部と人文学部の2~4年生81人に対してオンラインで講義を行いました。


 講義のタイトルは、昨年まではずっと「私の経営観」でしたが、今年は「経営者として46年」としました。私が当社に入って46年たち、今年から新たな気持ちで2040年の創業100周年に向かおうという思いから、このタイトルをつけたのです。


 スライドの内容はこれまでとほとんど一緒ですが、個人も企業も「目的を明確にすることが大切である」ということを強くアピールできるように順番を設定し、講義でコメントをしました。


 最初に私の経歴を紹介した後、本題に入り、「アンパンマンマーチ」の歌詞の「何の為に生まれて何をして生きるのか」が、作者のやなせたかしさんの弟が特攻隊員として戦死したことから生まれた歌詞であると話し、生きる目的は何かと問いかけました。次の中村天風師の言葉「ばい菌一匹でも、目的無くこの世に出てきたものはない。」では、ばい菌でもこの世に出てくる目的があるのなら、我々人間には生まれてきた目的があるはずだと進め、植物人間状態だった母を病院に見舞ったときに私が発した言葉「こんなになって、なんで生きているのかな?」に対する看護婦さんの言葉「人間が生きているのには、必ず意味があります」を挙げ、生きる目的、生きる意味を考えようと展開しました。


 次に「働くという字は漢字ではなく、端・楽であり、端、周りの人を楽にする、即ち、他人の役に立つ、世の中の役に立つという意味の和字、国字です」と解説し、再び中村天風師の言葉「この世、この時人間に生まれてきたのは、人の世の役に立つために生まれてきたんだよ。」を紹介した後、イギリスの天文学者ハーシェルが言った「I wish to leave this world better than I was born.」を映して、「われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより、世の中を少しなりともよくして往こうではないか」という訳を説明し、英語の土木Civil engineeringと社会資本Infrastructureの言葉の意味を説明しました。そこから1920年から10年間かけて台湾で烏山頭ダムを建設した石川県出身の八田與一技師の業績に話を進め、台湾で聞いた「飲水資源」、水を飲む者は、その源に思いを致せという故事成句を紹介した後に、モンゴル出身の大相撲力士が日本に来て、蛇口をひねれば水が出ることに驚いたという新聞記事を映し、さらに私が取材を受けた2010年の北日本新聞の記事「新経済人」での冒頭の私の言葉「建設業は人の生活基盤を支える仕事。人の役に立つという意味で、介護の仕事と同じ」を映し、当社は土木工事をメインとして世の中の役に立とう目的、富山をより良くしていこうという目的を持つ会社であると語りかけました。


 その後は、会社の概要や工事実績へとスライドを進め、近年に災害対応で出動した自然災害の一覧表の後に、私の親友の土木技術者が彼の講演で語った「みんなの日常生活を支え、気付かれないのが土木の価値。でも、土木なくしては誰も生きてはいけない」という言葉を紹介しました。そして、何のために企業経営をするのかという経営の目的を明文化し経営理念を映し出しました。「建設事業とその関連事業を通して世の中の役に立つ」という経営理念を実現するための戦略として、工事部ではODSC(目的、成果物、成功基準)を明確にしCZ(クッション・ゼロ)式原価管理で施工していること、「人は経費ではなく成長する資源と考える」という経営理念を実現するための戦略として人材育成を経営方針に掲げ、その戦術、戦術として適切な人事評価、適材適所の人事、人材開発体系の構築などを行っていると説明しました。さらにこれまでの女性技術者採用の歴史を年表で映し出し、Tさんと、昨年退職したSさんのインタビュー記事も見せました。


 そして終盤では、2000年から今年までの売上と利益の推移を説明した後、2016年から策定を始めた中期経営計画・ビジョンの解説をしました。VISION2021では「3C」(Chance、Challenge、Change)を説明し、私が入社以来これまでに行ってきた多くのチャレンジの事例を紹介しました。そして、吉田松陰の言葉「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」を踏まえて、私の夢は2040年の朝日建設100周年パーティーに、2017年1月に生まれた初孫の「ゆき」に振袖を着せて出席し、立派なスピーチをすること、理想は朝日建設がしっかり存続していて、今よりも立派な会社として世の中の役に立っていること、計画は3年ごとの中期経営計画を繰り返して、2039年(創業99周年)に至ること、実行は毎年確実に中期経営計画を進めることであると締めましたが、最後のスライドで「袖振り合うも他生の縁」という言葉を紹介して、今日の講義はオンライン上であっても、皆さんと繋がることができたのは、前世からの縁だと思っていると話して、講義を終えました。


 講義の翌週に、受講した学生の感想文が送られてきましたが、私がスライドで紹介した数々の言葉や説明した内容のそれぞれにしっかり反応してくれ、働く意義や土木の大切さに気づいたとか、有意義な時間になったという感謝の気持ちなどが述べられていました。その中で印象に残っているのが、「感動したのは林先生が授業の最後に言われた『今日は楽しかったので、帰って女房のおいしいごはんを食べます。楽しかった、ありがとう』という言葉だ。システムがうまく行かずに出遅れたご講義だったが、このように最後は満足して感謝と家族を大切にしておられる様子が伝わってきて、なんて素敵な方なのだろうと思った。私も一つひとつのことに感謝し、有意義に時間を使えるようになりたい。」と、「経営理念の中にあったフレーズとして『ふるさと富山を発展させる』とあったが、これに対して林社長自らが『とやまはいいよね、海や山がきれいで、食べ物もおいしい』と、漏らすように説明していただきました。もともといいものをより進化させてもっと多くの人に知ってもらおうとする姿勢が会社の経営理念につながっているのだろうと感じた。」です。リアルの講義だと、「居眠りしてるな」とか「質問しても手を挙げないな」などと考えたりしますが、オンラインの講義ではそれがなくて実際に楽しくやれたから出た言葉であり、また、水や空気そして魚や日本酒から富山県は一番だと常々思っているので出てきた言葉でした。


 感想文の中に、経済学部6人と人文学部4人が質問を書いていましたので、延べ3日間かけて丁寧に回答しました。回答する中で、今後の経営に活かそうと思ったこともあり、講義をしてよかったと改めて思っています。